聴く力(反応力)
傾聴能力を高める手法として「コーチング」という手法があります。単なる傾聴能力を高めるだけでなく、学ぶと実に奥が深く、高い傾聴能力はベースに必要ですが、そこには心理学、脳科学、カウンセリングの要素も含まれた学問であり哲学であります。
リーダーシップというと、部下をグイグイ引っ張っていく迫力があって逞しい饒舌多弁で相手に有無も云わさぬ力強さというような印象を多くの人が持ちますが、コーチング型リーダーシップは全く違います。話し手ではなく、聴き手が自然体で主導し、理想的なゴールへ導いていく、到達したいところへ一緒についていってあげる。解決策が見つからず悶々としている人との対話の中からその悩みの本質を見つけ、聴き手が解決の具体策のところまで寄り添って一緒についていってあげる、相手の自発的行動を促していきます。云わば、こんなリーダーシップなのです。
想像してみて下さい。例えば、あなたは悩み事を抱え苦しんでいます。それを先輩Aさんに打ち明けたとします。テーブルの向こうでAさんは身を乗り出し、あなたの目をしっかり見つめて頷きながら「うんうん」「なるほど」と相槌を打ちながら一所懸命あなたの話を聴いてくれます。時に「そんなことがったんだ」「辛かったんだね」とまるで自分事の様に共感してくれます。そんな聴き方をしてくれたら、あなたはどんな気持ちになるでしょう?
もう一つ、想像してみて下さい。例えば、あなたは悩み事を抱え苦しんでいます。それを先輩Bさんに打ち明けました。テーブルの向こうでBさんは腕組み足組みよそ見をしながら、時に携帯を見たり、あなたの話にはまるで興味がないどころか、面倒臭そうにしています。そんな聴き方をされたら、あなたはどんな気持ちになるでしょう?
聴くまでもありませんね。Aさんに対しては、話してよかった、もっと聴いてもらいたい、そればかりか癒されて苦しみが和らぎ気持ちが楽になり、Aさんに対する感謝の気持ちが湧いてくるでしょう。一方Bさんに対してはどうでしょう、話さなきゃよかった、もう二度とこの人には悩みなど打ち明けるものか、そればかりか余計に苦しくなり、Bさんに対する怒りや憎しみの気持ちまでも湧いてくるかもしれません。
良い聴き方(良い反応)をされると、もっと伝えたく(発信したく)なります。そればかりか、癒されたり、苦しみが和らいだり、感謝の気持ちも湧いてきます。
良くない聴き方(良くない反応)をされると、もう伝えたく(発信したく)なくなります。そればかりか、苦しくなり、時に怒りや憎しみの気持すら湧いてくることもあります。
そして、上記の例からも分かるように、聴く(反応する)とは、ただ聴くではなく、態度や姿勢、仕草、表情に至るまで、総じて「聴く(反応する)」であります。
そう考えると、聴く側(反応側)の責任はとても重大です。相手に良い発信をしてもらえるかどうかは聴く側(反応側)にかかっています。人間関係の責任は聴く(反応する)側にあると云っても過言ではありません。
